【京急大師線産業道路駅】8車線の道路を数分毎に遮断していた踏切

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ここは「産業道路」と呼ばれる8車線の地方主要道路、その名の通り貨物トラックが多く行き交います。そんな混雑する車を横目に、赤い電車は5分ごとに容赦なく・・・

京急大師線産業道路駅、駅の脇を通る地方主要道「神奈川県道6号東京大師横浜線」が、通称「産業道路」と呼ばれていることから名付けられました。駅周辺の地名ではなく、国道駅・阪神国道駅と同様、駅付近を走る道路の名前が駅名になっている珍しい駅です。

その産業道路駅の由来となった産業道路を遮断する、産業道路第一踏切。平日の多いときは2分ごとに列車が行き交うため、主に貨物トラックなどの自動車をしばしば遮断していました。

なお京急大師線は地下化工事が進められています。産業道路駅周辺も対象となっており、産業道路第1踏切は2019年3月に役目を終えました。さらに地下化後は「産業道路」という駅名も消える予定となっています。

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京急大師線、川崎大師と臨海地帯

京浜急行電鉄、関東大手私鉄の1つであり略称「京急」とも呼ばれます。その名の通り東京品川から横浜の他、三浦半島や羽田空港を主に結んでいます。

京浜急行本線の主要駅、京急川崎駅。一番早い種別である特別快速も停車する主要駅です。2000年代から周辺の再開発も始まり、2016年には駅ビルもできました。

京急川崎駅は本線の他に、京急大師線の始発駅でもあります。本線が高架線にあるのに対して、大師線は地上にあるホームから発着します。

京急大師線は、京急川崎から川崎大師を経由して小島新田を結ぶ支線です。全列車普通列車しかなく、全7駅で距離は4.5km程です。主な利用客は、沿線の通勤客や川崎大師への参拝客がほとんどです。

大師線の列車に表示される行先表です。「普通 小島新田⇔京急川崎」を常に固定表示しており、全区間を終日往復する運航となっています 。京急は4つの支線を持っていますが、大師線以外の支線は本線から直通する列車を受け入れる運用となっています。しかし大師線だけは、本線からの乗り入れが全く存在しない独立した運用となっているのです。

京急川崎駅から大師線に乗った際の前面風景です。大師線は右方向にカーブして、川崎大師や産業道路を目指します。中央には大師線の車両基地、左にある高架線は京急本線。ちなみに車両基地と高架線の間にある本線と大師線を結ぶ線路は、回送列車の入替しか使われていません。

産業道路駅は地下への移動途上

大師線に乗って京急川崎駅から5つ目の駅、産業道路駅に到着しました。終点小島新田駅とは1つ手前の駅です。

産業道路駅のホームです。訪問当時は地下化工事がもう終盤であり、ホームは鉄骨むき出しの仮設状態になっていました。

産業道路駅には、跨線橋がない代わりに構内踏切があります。先ほどの写真のアングルも、構内踏切があるからこそ撮影ができます。一見安全ではないかもしれませんが、利用客が多い川崎方面のホームへは高低差のない構内踏切のほうが移動量が少なくて済みます。

産業道路駅の駅舎です。地下化工事のため殆ど仮設のような造りになっており、作業通路で狭められた通路を通った先にありました。

産業道路と赤い電車のハーモニー

さて、役目を終える地上駅を堪能したところで、今回のメインはホームの反対方向にある踏切です。なお京急大師線は産業道路から小島新田の間は、唯一の単線区間がありました。

まず駅舎から出ると、目の前には神奈川県道6号東京大師横浜線こと「産業道路」という片側4車線の大きな道路があります。高架には横浜と羽田を結ぶ首都高速も通っています。そんな大きな道路を遮る踏切が、左手に見えています。

その踏切がこちらです。警報機や遮断桿の数もさることながら、黄色のイカツイ門まで設けられています。門には踏切を示す「×」印だけではなく、「踏切一旦停止」という点滅表示させる装置まであります。交通渋滞や事故のために踏切が消えていく昨今、このような大きい踏切も珍しい存在になりました。

産業道路第一踏切、その遮断人生・・・

この踏切は「産業道路第一踏切」という名前でした。設置当時からと思わしき古い木製看板がありました。

産業道路第一踏切の大きさを改めてみてみましょう。遮断棒は道路に8本と歩道に4本、警報機もオーバーハング型を含めて12台もありました。そんな踏切が動いた時には、もはやお祭りです。

そうしているうちに列車が来てしまいました・・・。道路をせき止められて渋滞する車を尻目に、いつものように赤い電車は躊躇することなく道路を横断していきます。こんな光景が休日では5分に1回、さらに平日では3分以下の頻度で発生していました。

写真では雰囲気がわからない!そんなあなたに動画をご用意いたしました。玄間が通る音、そして踏切の警報音が高架下とあって響き渡ります。そんな普段と変わらなかった日常をご体験ください。

さて産業道路第一踏切の光景を眺めるのに最適な場所がありました。大師河原交差点にあったこちらの歩道橋です。

歩道橋からの眺めはこのような感じです。上には首都高速の高架橋と多くの大型車両が通行する道路、そしてそれを遮断する踏切・・・。乗り物好きなら1日見ても飽きない風景がそこにはありました。

訪問後記

大きな道路を一斉に遮断して赤い電車が悠々に走り抜ける・・・その光景はいつ見ても圧巻でした。しかし5分以下の頻度で遮断するとあって、道路混雑がもう限界の状態に来ていました。

京急大師線は連続立体交差事業が行われており、川崎大師から小島新田までを地下化させる工事が行われていました。そして地下化が半年後に迫った各工区の写真には、新たに地下駅として使われる産業道路駅が既に完成していました。

そして2019年3月、京急大師線の産業道路周辺の地下ルートが開業しました。写真の産業道路駅の地上駅と踏切の光景は、もう二度と見ることはできなくなりました。そして駅名「産業道路」も、1年後に「大師橋」という名前に代わることになりました。

いままで5分に1回見ることができた、というよりかは踏切で嫌でも見ざるを得なかった赤い列車が通る風景も、もうこれからは見ることはありません。

しかし京急の赤い列車は、産業道路地下の線路でいつものように走り続けることでしょう。この日夕焼けに染まった産業第一踏切は、いつもよりも警報音を遥か彼方へと響かせていました。

ありがとう・・・産業道路駅、さようなら・・・産業第一踏切。産業道路に再び新しい光景が生まれようとしています。