地下鉄の地上車庫・・・そんな風景も珍しいですが、都会から一歩外れたこの地で、今日も地下鉄は都会を目指して走り出します。
市営鉄道局は市内の鉄道運営を行うことが基本であり、市外に出るときは他路線の接続という利便性を図るためにわずかに延伸する場合がほとんどです。しかし大阪市営地下鉄谷町線のここ八尾南駅は、他の路線に接続しないうえに大阪市からはみ出した孤立した終着駅となっています。
なお大阪市営地下鉄は2018年4月に民営化されます。長年親しまれたこの大阪市交通局の「Oとコ」マークも姿を消します。
市営地下鉄谷町線、その終点は孤立駅
東京に次ぐ経済都市大阪。USJや写真の道頓堀を含めて数多くの名所や街歩きしやすさもあり、海外の観光客も純増で世界一と激走中です。
そんな大阪の町を支える地下鉄、大阪市営地下鉄。新交通システムの南港ポートタウン線を含めて9路線あり、市営地下鉄としては日本で一番大きい規模となります。しかし大阪市営にもかかわらず、中には大阪市からはみ出している駅が存在します。そのうちの一つの駅、八尾南駅に今回は行って参りました。
大阪市営地下鉄が保有する路線の一つ、谷町線。大日から東梅田・谷町・天王寺を経由したのち、八尾南へと至る路線です。ここから終点八尾南駅へ向かいます。なお阿倍野から先は、終点の八尾南を含めて一切他の路線と連絡がありません。
到着直前に地上に出た後、八尾南駅につきました。駅の終端側は、大日検車場八尾車庫があります。列車は側線のおよそ8割ほどの数が安置されており、ラッシュ時にこれらの車両がフル稼働することがうかがえます。
八尾南駅は終点の為、行先の案内が反対方向の都島・大日方面のみの案内となっています。日中は7~8分間隔で出発します。なお日中3番線は回送列車が常に留置されており、2番線のみ列車が出発しては直ぐに次の列車が入ってくる方式となっています。
写真の列車は、谷町線もう一方の終点である大日へ折り返す列車です。なお終点大日駅および一つ手前の守口駅も、大阪市からはみ出した守口市にあります。しかし大日駅は大阪モノレールと接続しているため、八尾南駅とは異なり孤立した駅ではありません。
広いコンコースと車両基地、大阪市にあらず
さてホームから上がると、殺風景なコンコースが現れます。日中ですが、御覧の通りがらんどうです。椅子が設置されていますが、撮影当時は誰も座っていませんでした。駅の規模の割には乗客は少ないことがうかがえます。
さて八尾南駅周辺の地図を見てみます。手前は大阪市平野区ですが、八尾南駅に入る直前に八尾市に入ります。谷町線はここが終点であり、他の路線は地図を見た限り見当たりません。
こちらが八尾南駅の駅舎です。車両基地併設で事務所を兼ねている建物でしょうか・・・地下鉄の地上駅舎としてはかなり大きいです。写真では駅前から、JRおよび近鉄の八尾駅行きのバスが地下鉄からの乗客を待っています。
そもそも八尾南駅は八尾市中心部から外れており、駅前の風景もさることながら日中のロータリーもこのように閑散としています。八尾市における大阪へのアクセスは近鉄八尾駅が主に担っており、ここ八尾南駅から地下鉄による大阪へのアクセスもあまりいないようです。
駅前は人が入れない荒野・・・
実は先ほど紹介した八尾南駅の駅舎は3番から5番出口側であり、1・2番出口は線路反対側にあります。写真は八尾南駅の2つの入り口を結ぶコンコースです。手前側が先ほどの駅舎側です。車両基地を跨ぐため、大変長い構造となっています。しかし日中は御覧のように閑散としています。
コンコースの途中には、車両基地が見える窓があります。ただし落下防止のための柵がありますので写真の如くですが・・・。ちなみにここ八尾南駅から先の延伸計画があったそうですが、大阪市外故に計画は進んでいないようです。
こちらが八尾南駅の1番及び2番出口です。反対側は閑散としながらもロータリーがありましたが、ここの出口は同じ駅とは思えないほどの広い空き地が広がっています。
反対側のロータリーがまだ賑わいがある方でした・・・こちらの出口は人が立ち入ることができない空き地が広がった駅前です。実は駅北側には八尾空港がありますが、この空き地は空港の駐機場跡でした。使われなくなった今柵が囲まれたこの空間は、自然に帰りつつあります。
1番出口から大日方面を見てみます。谷町線は左側に本線があり、そのままトンネルに入ります。そして前方の屋根付き車庫がありますが、この建物の途中で八尾市から大阪市に入ります。それに伴って、隣の空き地も市境から雰囲気が変わってまいります・・・。やはりここが都会の隠れた果てなる終着駅ともいえるかもしれません。
訪問後記
大阪市営地下鉄八尾南駅、それは大阪市からわずかにはみ出た八尾市南側の片隅にある孤立した駅。しかし八尾市の中心部から離れたこの駅は、大都市大阪を縦貫する谷町線の車両基地を備える重要拠点でした。谷町線は八尾市・守口市という隣の市の場所に置かれた車両基地によってによって、大阪市の交通を支えていました。
そして大阪市営地下鉄は2018年4月に民営化され、長年親しまれたこのマークも姿を消してしまいます。しかし4月になれば「大阪メトロ」として名を変え、いつもと変わらず多くの乗客を大阪で出迎えてくれることでしょう。八尾南駅は、閑散としつつもそんな地下鉄の変わらぬ鉄道の営みの光景が見られました。
そして検車場から出てきて安全確認を行う高速運転士、その名も路面電車時代から続く交通局独特の呼び名です。今日も高速運転士は車両を操り、新しい時代に向かってここ八尾南から飛び出そうとしています・・・。
それでは、また不思議な鉄道風景でお会いしましょう。