浅草から日光・鬼怒川へ・・・東武鉄道の有名なフレーズです。実はほかにも「赤城」「太田」「伊勢崎」「宇都宮」、果ては「会津高原」・・・その長大路線の出発点である浅草駅では、様々な列車が行き交います。
2017年に東武鉄道は観光列車を中心に大きな進化を遂げました。快速・区間快速を置き換える特急「リバティー」が登場し、さらに大手私鉄では初の観光用SLまでも走ります。ここでは、そんな進化前の風景を焼き付けてきました。
旅の始まりは浅草から
今や日本を訪れる外国人観光客が必ず訪れる観光地、浅草。松屋浅草の2階部分に、丸ごと東武鉄道の浅草駅が入っています。今回は夜の写真を掲載します。夜に浮かぶ由緒ある建物、これもまた乙なものです。
浅草駅の改札口です。しかし大手私鉄のターミナル駅としては、改札口の数は少なめです。この駅は構造上6両編成の車両しか入ることができず、人を捌く通勤輸送にはあまり向いていません。むしろ浅草という立地もあり、観光客輸送の色が強いです。この駅の構造は以下のページで紹介しております。
浅草駅は5番ホームまであり、1・2番ホームが通勤列車、3・4番ホームが特急列車となっています。特急列車は「宇都宮」「太田」「日光」「鬼怒川温泉」等、行先は多方面の列車がたくさんあります。一方通勤列車は時間にもよりますが、「普通北千住行き」「区間準急久喜行き」がほとんどです。
今日はどこへ行こうか・・・行先はいろいろ!
さて2番線にあった路線案内をみてみます。あぁ、いい眺めです。・・・あくまで私はですが、そうでない人は降りる駅を探すのに一苦労です。東武鉄道は、関東の私鉄で一番長い路線網を保有しています。余談ですがこの案内は東武本線のみで、さらに東武東上線もあります。
まず1・2番線は6両編成の普通列車が発着します。この時間帯は1番線が「普通北千住行き」、2番線が「区間準急久喜行き」と決まっていました。これらの列車は、地下鉄線乗換駅である曳舟・北千住を発着する通勤列車に接続させる役割があります。
そして3・4番線を発着する特急列車は・・・列車のイラストが描かれていました。大変わかりやすい看板をありがとうござます。
ちなみに5番線を発着する快速列車は・・・6050系と呼ばれる観光向けの列車が入ってきます。快速列車は乗車する車両によって行先が異なるため、列車のイラストは車両案内のところに書かれていました。なお2017年4月より区間快速・快速が廃止され、6050系も浅草には来なくなりました。おそらくこの看板も今は亡きものです。
東武の花形、スペーシア!
さて私が到着した時は、既に100系がいました。この車両はスペーシアとも呼ばれ、東武特急で日光・鬼怒川温泉へ向かう特急列車です。主に「特急けごん、東武日光行き」・「特急きぬ、鬼怒川温泉行き」の列車で使われます。またここ浅草以外もJRの新宿・池袋から発車する列車もあり、こちらは「特急日光・きぬがわ」といいます。
さて、スペーシアが到着してきました。この列車は特急「きぬ」ですが、鬼怒川温泉よりも1駅先の鬼怒川公園行きでした。
1991年というバブル景気も微妙になってきたときに誕生したこの列車・・・ホテルのような内装や個室車両も備えており、ある意味時代を反映した列車ともいえます。
ずいぶんと賑やかな音楽とともに出発していきました。カーブの彼方に消えていく姿はいつ見ても圧巻です。なお2017年4月に鬼怒川公園行きはなくなり、現在特急「きぬ」は鬼怒川温泉行きのみとなりました。今回導入される特急「リバティー」は、観光客おもてなし豪華絢爛とは無縁なので、スペーシアの脅威にはならないと思います。ただしこのようなバブル時代の車両も稀有な存在になりつつあります。・・・そのうち乗車して紹介したいと思います。
栃木・群馬の都市へ、「りょうもう」!
次に紹介するのが、特急「りょうもう」で使われている200系列車です。観光地を結ぶ役割が強いスペーシアよりも、地方都市を結ぶ特急としての役割が強いです。
特急りょうもうが到着してきました。特急きぬ・けごんとは異なり、りょうもうは様々な行先があります。行先は以下の5つ。
- 伊勢崎線の「館林」「太田」「伊勢崎」
- 桐生線の「赤城」
- 佐野線の「葛生」
ただし「伊勢崎」「葛生」「館林」は1日1往復のみです。
ちなみに浅草の一番先頭側からも乗れます。ただしここから乗るのは、写真を見る限りお勧めいたしませんが・・・。
特急「りょうもう」が発車していきます。2017年4月では特急「りょうもう」に大きな変化はありませんでしたが、特急「りょうもう」は、支線が多い東武鉄道故に行先が多岐に及ぶため、増解結が得意な特急「リバティー」導入によって、この列車の運用も今後変化する可能性があります。
臨時・ホームウェイ特急専門、300・350系!
さて次は主に臨時特急列車で使われている300・350系です。それぞれ夜行列車を含めて以下の特急を運航しています。
- きりふり << 東武日光行き
- しもつけ << 東武宇都宮行き
- ゆのさと << 鬼怒川温泉行き (臨時)
- 日光夜行 << 東武日光行き (夜行・臨時)
- 尾瀬夜行 << 会津高原尾瀬口行き (夜行・夏季臨時)
- スノーパル << 会津高原尾瀬口行き (夜行・冬季臨時)
なお「しもつけ」を除いて特急「きぬ」「けごん」と重複していますが、これらは300・350系という列車・1日1往復および臨時という条件で使われるためです。今回は簡単・・・に「きりふり」と「しもつけ」を紹介いたします。
特急「しもつけ」が到着してきました。臨時を除き、普段は1日1往復のみ運行しています。特急「けごん」と同じく東武日光を発着する列車ですが、臨時列車という名目上、スペーシアよりも特急料金は安く設定されています。
浅草駅に到着した特急「きりふり」です。他の特急列車の6両編成よりも短い4両編成です。ちなみに6両編成が300系、4両編成が350系です。2017年4月では6両編成の300系がなくなりますが、車齢が長い故、350系の方も危ないです。
特急「きりふり」のヘッドマークです。霧降高原のニッコウキスゲを絵柄にした上品な色合いです。スペーシア100系やりょうもう200系が流線形なので、このようなヘッドマークがある車両も新鮮に見えます。
この後回送列車となって一度引き上げていきました。
その後同じ車両が再び浅草駅に現れました。特急「しもつけ」の東武宇都宮行きです。この列車も1日1往復しかありません。
始め「回送」だったヘッドマークを変えています。「スノーパル」「尾瀬夜行」「ゆのさと」「きりふり」、そして「しもつけ」幕の順序という事情ですが、すべて見せてくれちゃいました・・・。ちなみにかつて「ゆのさと」「しもつけ」等は有料の急行でしたが、半蔵門線と直通運転を開始したときに優等種別として急行を使うことになり、すべて特急に格上げとなっています。しかし方向幕には今も急行種別が残されていました。
特急「しもつけ」のヘッドマークです。この花はカタクリのようです。ちなみに「ゆのさと」はツツジです。やはりヘッドマークがあるとわかりやすいです。
特急「しもつけ」が発車していきます。1日1往復の特急どころか、浅草から東武宇都宮へ行く列車自体珍しいです。しかし競合する上野からJR東北線(宇都宮線)普通列車の方が30分も早いそうです。そのため途中駅までの通勤客がほとんどで、終点まで乗る客はあまりいないようです。2017年4月にも残りましたが、350系含めて今後も残るかどうかはわかりません。
特急よりも遠くへ!今は亡き区間快速・快速列車
さて最後に区間快速・快速について紹介いたします。今回は浅草に到着した時のシーンを撮影しました。特急「きぬ」が鬼怒川温泉・鬼怒川公園までなのに対し、こちらの快速列車はそれを超えて福島県の会津田島まで連れて行ってくれました。その浅草へ向かう快速列車で使われたのが、観光用途の列車6050系です。このような特急よりも下の種別が遠い目的地へ行くというケースは他にも、西武鉄道の快速急行長瀞・三峰口行きがあります(特急ちちぶ号は西武秩父止まり)。
しかし2017年4月に特急「リバティー」に置き換わる形で区間快速・快速は廃止、同時に6050系も浅草には来なくなりました。。
区間快速が浅草駅に到着してきました。遠いところは会津田島からの200km弱もの長旅です。途中で新藤原・東武日光始発と連結して浅草につきます。
この時間の区間快速・快速は浅草行きのみでした。乗客を降ろした後は回送列車となります。
回送で引き揚げていきました。動画は会津田島からやってきたこの日最後の区間快速・浅草行きでした。
一方日光・鬼怒川・会津田島へ向かう上りの快速に乗るためには5番線へ向かいます。
快速行先案内たる看板が、壁に掲げられており、「東武日光・新藤原・会津田島」と書かれていました。快速列車の前2両に乗れば、一番遠い会津田島に向かうことができるというわけです。なおこの案内の通り、快速列車は1・2時間に1本の割合でしたが、わざわざ専用ホームを設けるほど、特急に等しい待遇でした。
こちらは先頭側の快速列車の写真です。通勤列車と共に・・・。あまりいいアングルでないことはご容赦ください。ここは2階でこれより下がると落ちるので・・・。この光景も2017年4月まででした。なお今は亡き快速列車については、詳しいページを作りましたのでご覧ください。
訪問後記
浅草から「日光」・「鬼怒川」・「赤城」や「宇都宮」そして「会津」まで、長距離路線を保有する東武鉄道の始発駅「浅草」駅は、まさにターミナル駅でした。その列車の種類は・・・
- 沿線住民のための通勤列車
- 観光地方面または地方都市を結ぶ様々な特急列車
- また私のような旅情を楽しむ者のための快速列車
鉄道の在り方そのものがまさに凝縮されていた駅でもありました。
2017年、快速の運用は終わりを告げました。旅情を楽しむ人の終焉、それも時代の流れなのでしょうか・・・。その快速を継ぐ新しい存在、特急「リバティー」が今回登場してきます。そして普段と変わらない風景で、目的地へ向かう乗客を送り届けることでしょう。
ここ浅草駅に、新しい流れが訪れようとしています。
2017年のダイヤ改正について
この訪問後、東武鉄道は大規模なダイヤ改正が行われました。それぞれ・・・
- 注意 << 特急「りょうもう」多方面運航
- もう危ない << 特急「きりふり」「しもつけ」等の1日1往復及び臨時特急
- もう危ない << 350系列車
- 消滅 << 区間快速・快速
- 消滅 << 特急を除く列車の南栗橋以遠の運航
- 消滅 << 6050系の浅草口運用
- 消滅 << 300系列車
消滅以外は独断ですが、まずは上の項目にまとめました。
また「スペーシア」こと100系についても最近気になるニュースがありました。
キャンペーン特別列車として・・・ 特急「スペーシア那須野号」を運転します!!
http://www.jreast.co.jp/press/2017/20170420_o04.pdf より
東武の花形列車が、JR路線のみを走る特別列車として運航するというものです。私はこれを見る限り、特急が浅草発着から離れはじめている(?)という勝手な気がするのですが・・・考えすぎかもしれませんが、実際浅草駅は新宿・大宮のように便利とは言えませんし、事実「特急日光・きぬがわ」としてJR新宿から東武線を経由する運航を始めています。バブル期の特急が珍しい!ファンサービス!という純粋な理由であることを願ってやみません。
そして2017年4月のダイヤ改正で特急「リバティー」が走り始めました。これによって特急「南会津」以来だった福島・会津にも東武特急が再び走り始めます。また「リバティー」は会津だけではなく、野田線直通や春日部までの近距離の着席型特急としても運用を始めています。これらの風景を見るべく、また日を改めて浅草駅を訪問したいと思っております。
それではまた不思議な鉄道風景でお会いしましょう。