ここは東京の地下鉄にある終着駅。東京の地下鉄なのに3両編成でホームが1つ・・・東京の果ての果て、つまりは場末のような雰囲気が漂う。
千代田線北綾瀬駅。千代田線の綾瀬~北綾瀬の1区間のみ運行する北綾瀬支線の終着駅です。1つのホームに3両編成の列車が10分間隔で静かに発車していくという、都心の地下鉄とは思えない雰囲気を放っていました。
終着駅への旅は0番線から
東京都足立区、綾瀬駅。東京メトロ千代田線とJR常磐線の駅であり、両者の発着点を結ぶ重要な駅です。
東京メトロ千代田線は代々木上原から千代田区を経由して綾瀬を結ぶ路線です。また小田急線とJR常磐緩行線への直通運転も行われており、特に常磐線へは殆どの列車が直通するため、事実上同一路線となっています。
しかし千代田線には代々木上原~綾瀬だけではなく、綾瀬と北綾瀬の1区間だけを結ぶ北綾瀬支線が存在しています。北綾瀬支線は、常磐線に直通する本線とは独立した運航となっていました。
その北綾瀬へ向かう列車は0番線から発着します。0番線自体JR路線では数駅程ありますが、地下鉄路線で0番線が存在する駅はここしかありません。
こちらが北綾瀬行きの列車です。本線で運行している列車が10両に対して、この北綾瀬支線用の専用列車は3両しかありません。この列車は元々東西線で使われていた列車を改造したものです。
東京地下鉄、1区間の旅
車内の中はこんな感じです。つり革や座席を含めて大きな違いはありません。ちなみに進行方向右側にもドアがありますが、この路線は左側のドアしか開きません。
車内にはディスプレイの案内表示もありますが、ここまでシンプルすぎる案内ももはや痛快です。何せ綾瀬駅と北綾瀬駅の2つだけです。次が終点なのですから・・・。
北綾瀬支線を走行する列車です。東京地下鉄ですが、北綾瀬支線は全区間高架線を走ります。綾瀬駅及び北綾瀬駅の間は複線区間であり、走行中に反対側から来るもう1つの列車に出会うことができます。
1ホームの終着駅、この上なきシンプル
わずか1区間の終着駅である北綾瀬駅に到着しました。ホームは北綾瀬支線用の列車3両分の長さしかないため、写真のような列車の前面を撮影するのにかなり苦労します。
北綾瀬駅の駅名標です。「←綾瀬 北綾瀬」、これ以上にないシンプルなものです。この表記は東京メトロの前身である営団地下鉄時代のスタイルです。近年の駅改良工事で数少なくなりつつある表記です。
ホームはこのようになります。乗り場は1つしかないため、「綾瀬方面」と書かれた案内しかありませんでした。そもそも乗り場が1つしかない東京の地下鉄はここ北綾瀬駅だけですが、同じ足立区には東武鉄道の大師前駅があります。
ちなみに北綾瀬駅の構内図がありましたが、東京の地下鉄とは思えないほどの超シンプルな案内です。ちなみに「綾瀬方面」としか書かれていなかったホームは、1番線でした。
車庫、それは果ての駅の向こう側
実は北綾瀬駅の先も線路が続いており、その向こうには千代田線の綾瀬車両基地が見えます。そもそも北綾瀬支線は本線と車両基地を結ぶ接続線であり、車庫周辺の旅客輸送のために北綾瀬駅は設置された経緯があります。
ちなみにこの時小田急線の特急車両MSEの出庫作業が行われていました。千代田線は指定席特急列車が運航されており、小田急線への通勤客及び行楽客の輸送を担っています。ちなみに北綾瀬駅に入る直前に乗務員の詰所があり、ここで列車を一時停車させて業務が行われているようです。
そして出庫作業を終えた列車は、北綾瀬駅のホームがない方の線路を通り、そのまま綾瀬駅に向かって発車していきました。北綾瀬支線は3両編成の列車が10分間隔で運行していますが、その間を縫って本線へ列車を出し入れしているのです。
自慢の作品は、北綾瀬ギャラリーへ?
さてホーム見学もこのくらいにして階段を降りると、ベンチが置かれたとあるスペースがあります。そこには複数の絵画や写真、花瓶や調度品のようなものが・・・
北綾瀬ギャラリー
列車の待ち合わせにご利用ください
天井から釣り下がっている年季の入った木目調の看板があります。ちなみに東京メトロになってから設置された待合室はホーム上にありますが、おそらくこのキャラリーはその待合室がなかった時の営団地下鉄の時代に設置されたものでしょう。
お知らせ
この「ギャラリー」はお客様の趣味の作品を展示するコーナーです絵画書道等何んでも結構ですので駅事務所にお申し出ください
駅長
・・・と書かれています。こんな記事を書くしか能がない私には縁もありませんが、もしこの記事をお読みの方で展示したい作品があれば・・・ですね。
訪問後記
駅を出てみると、わずか3両分しかないホームに併設する駅舎があります。しかし、現在その一部が取り壊されて工事が行われていました。
実は2019年3月から綾瀬発着だった本線の一部の列車を、北綾瀬駅発着にする運航になりました。そのため3両分しかなかったホームの長さを、本線の列車に対応した10両分に伸ばす工事が行われていました。ほかにも出入り口を追加・変更したりと、今までの北綾瀬駅の姿を大きく変える内容です。
この工事によって営団地下鉄時代を思わせる遺構も消えていくことになりました。もちろん綾瀬行きの列車しか来ないこの3両分しかない閉じられた空間も、もう過去のものとなっています。
そしてこの3両編成の専用列車・・・、本線の10両編成の列車に交じって引き続き活躍しています。しかし輸送量がひっ迫した昨今、この専用列車が今後も残ってくれるかどうかはわかりません。北綾瀬駅はいま大きな変化を迎えようとしているのです。