ここはとあるローカル線の途中駅、鉄路はここから太平洋の港町を結んでいました。しかしあの日を境にこの駅は突然終着駅となります。ここから先の復旧はいつになるのでしょう・・・。
気仙沼線はかつて小牛田・前谷地駅から気仙沼を結ぶ地方交通線でした。しかし東日本大震災によって気仙沼線は被災し、バス(BRT)による運航が主体となります。気仙沼まで行くことができない気仙沼線・・・柳津駅はそんな気仙沼線の終着駅となるのです。
宮城県の鉄道中心駅から太平洋へ
宮城県の小牛田駅です。小牛田駅は仙台駅にも引けを取らない鉄道の中心駅であり、以下の列車が発着しています。
- 東北本線:仙台方面
- 東北本線:一ノ関方面
- 陸羽東線:新庄方面
- 石巻線:女川方面
- 気仙沼線:柳津方面(石巻線乗り入れ)
というわけでここ小牛田駅から気仙沼へ向かうには、気仙沼線に乗る必要があります。しかしやってきたのは女川行き・・・
時刻表を見てみると、石巻線の女川行きと気仙沼線の柳津行き両方が発着しています。ちなみに今は8時半・・・つまり8時42分の石巻線女川行きで途中の前谷地駅で気仙沼線に乗換えればよいのです。
前谷地駅での乗り換え・・・
前谷地駅に着きました。ここで向かいにある気仙沼線の列車に乗り換えます。ちなみに石巻線の列車にそのまま乗ると、石巻を経由して女川へ向かいます。女川については以下のページをどうぞ。
さて乗り換え時間があまりないので前谷地駅は散策しなかったものの、駅前には赤いバスが止まっていました。なおこのバスには後々乗ることになります。
石巻線と共用ですが、気仙沼線の運賃表です。駅名を見ると柳津よりも先の駅も表示されており、一見すると気仙沼まで運航しているように見えます。
気仙沼線は田園地帯を進んでいきます。前谷地駅・和渕駅・のの岳駅・陸前豊里駅・御岳堂駅・・・
鉄路は突如途切れる・・・
しかし列車の終点は気仙沼までは向かうことなく、ここ柳津という駅で突然終わってしまいます。この列車は十数分停車した後、小牛田行きとして引き返していきました。
「柳津虚空蔵尊」の写真が書かれた柳津駅の駅名標です。本来案内されていた隣の駅「陸前横山」が隠されていました。
終点方向を見てみると、線路に草が生い茂っていることがわかります。しかし信号機は赤い点灯がついたままでした。実際線路は錆びながらもこの先まで続いていますが、BRT化によって道路化された箇所で途切れることになります。
柳津駅の駅舎です。ここで先ほどの赤いバスが現れ、残りの気仙沼線の被災区間を通って気仙沼へ向かうことができます。ちなみにバスは先ほどの前谷地駅を列車より5分遅れて発車し、20分弱ほど遅れてここ柳津駅に到着してきます。
訪問後記、しかし今後の復旧は・・・
気仙沼線は写真によるバス代行ならぬBRTによる復旧が行われ、鉄道としての復興の見通しは全く立っていません。気仙沼線は仙台から志津川を含めた南三陸町を経由し、気仙沼を結ぶ太平洋へ向かう鉄道ルートの一翼を担っていました。一時期は仙台から気仙沼線を通って三陸鉄道のリアス海岸沿いに走行する、快速「南三陸」も運行されていました。しかし東日本大震災によって普段穏やかだった太平洋は町を襲うのです。
気仙沼線も被災した結果、前谷地から気仙沼までの全線がバスでの仮復旧となりました。しかし前谷地から柳津までの被害が少なかった内陸区間は鉄道による運航が復活しました。かくして柳津駅は本来の終点気仙沼へ向かうことができない暫定的な終着駅となるのです。しかし2016年、気仙沼線はBRTによる本復旧が決定となり、二度と気仙沼の地を鉄路で踏むことはなくなりました。そしてここ柳津駅も、かつての目的地である気仙沼へ見送ることが叶わぬ終着駅としての役割をこれからも果たしていくことになります。
それではまた不思議な風景にお会いいたしましょう。