【マレー鉄道パダン・ブサール駅】タイ・マレーシア国境を眺めることができる国境駅

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一見すると田舎町に建てられた真新しい大きな駅、でもホームすぐ先は国境が走っています、今目の前を走っている長い貨物列車は、まさに国境をまたいでいる最中・・・


マレー鉄道パダン・ブサール駅(Padang Besar)、タイとマレーシア国境上約100mマレーシア側に位置している駅です。この駅は保有しているマレー鉄道の他、タイ国有鉄道が国境を越えて乗り入れており、マレー半島の鉄道網における旅客・貨物両面における重要な拠点となっています。


なおマレー鉄道は、現在高速化及び電化が進んでいます。そのためタイ国有鉄道でかつて行われたマレー鉄道バターワース駅への直通はなくなり、必ずここパダン・ブサール駅で乗り換えることになりました。そしてパダン・ブサール駅での審査を忘れて密入国扱いになってしまうトラブルが多発しています。これから紹介する記事を参考に、必ず審査場で手続きを受けるようにしましょう。

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バンコク駅から国境を跨ごう


タイ国鉄の特級駅、バンコク・フアランポーン駅。日本では東京駅に匹敵する、タイ全国へ向かう長距離列車の始発駅でもあります。


こちらがバンコク駅のコンコースです。タイの人々は仏教信仰者が多くを占めますが、マレーシア国境付近こと深南部方面はイスラム教徒の人々の方が多い場所になります。この時間帯はマレーシア方面の列車が入ってくるため、イスラム圏でも見られる服装を着た人々が若干多くなります。

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今回乗車するのは、タイ国鉄特急45号バンコク発パダン・ブサール行き寝台車併結の特急列車です。3番線から15時10分にバンコク駅を発車し、翌日の朝9時前に終点に到着します。この列車はバンコク駅を発車する列車において、国境をまたぐ唯一の列車となっています。


18時間にも及ぶ長い旅路、途中朝8時に到着するハートヤイ駅にて東海岸へ向かうスンガイコーロック行きの列車の分割も行われます。特急45号による旅路の記録は、別の記事で詳細に紹介しておりますので是非ご覧ください。またタイのマレーシア国境付近こと深南部地帯は、タイ王国からの独立を目指すイスラム過激派のテロ活動が活発な地域となっています。現在外務省から「不要不急の渡航中止」及び「渡航中止勧告」が出ていますので、不用意な行動は避けましょう。

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国は違えど・・・パダン・ブサール駅は2つ存在する!


さてハートヤイ駅を出発して1時間、列車は止まりふと駅名標を見てみると・・・なんとPadang Besarの文字が!あかん!降りなくては。


しかし降りようとしたところ車掌に制止されました。車掌曰く、「このパダン・ブサール駅はタイ側の駅で、マレー鉄道と接続する駅は次だ!」というのです。たしかにここで国境審査を行うような規模はありません・・・。


こちらが地図になります。パダン・ブサール駅は、国境を挟んで2つ存在していたのです。この町の経緯は調べていないので推測になってしまいますが・・・もともと所属する国は関係なく1つの町であったはずが、両国の国境を定めたときに町のど真ん中に国境が走ってしまったというような感じなのでしょう。そのためか両方の国が同じ名前を名乗る駅が存在している状態になっています。

駅を降りたら即審査!逃がしはせぬぞ!


そんなタイ側のパダンブサール駅を出発して数分経たぬうちに、国境を通過して真新しいホームに滑り込みます。特急45号の終着駅、パダン・ブサール駅です。はるばる長い旅路の長距離列車もここが終点となります。


長い列車の旅を終えて一息・・・つけません!列車を降りるや否や、半ば強制的にタイの出国審査およびマレーシアの入国審査の列に誘導されます。どうやら審査忘れのトラブルが後を絶たないように気を引き締めているようでした。

長い行列を並ぶこと30分以上・・・タイの出国・マレーシアの入国スタンプを押してもらうことができました。これでマレーシアに入国完了です!ちなみにマレーシアはタイよりも+1時間時差があります。特急45号が遅延なして到着した場合は、タイ時間9時、マレーシア時間は10時になります。気を付けましょう。

駅前通りは閑散・・・でも発展はこれから


無事入国を終えたところで駅巡りです。乗客が必ず降ろされる国境駅なので、さぞ便利かと思いきやですが。切符売り場に待合室とカフェテリア、そして出口と駐車場・・・これぞといった目立った施設はありません。ちなみにイスラム教徒の国お決まりとは言ってもいいですが、祈りの部屋があります。


1階にあるホームと審査場を後にして、待合室がある2階へ階段を上ります。2階部分にある待合室の中は、カフェテリアや売店が併設されたこのような雰囲気です。ちなみに乗車時及び車内検札が主流のためか、改札機はありません。余談ですが売店には「カルピス」が売られていました・・・。


出口は東西2か所あり、まずは西側の出口に出てみます。こちらがパダン・ブサール駅の駅舎です。橋上駅舎の構造であり、正直に言ってしまうと国境審査場を兼ね備えた重要な駅とは少し信じがたい姿です。


さらに反対側を向いてみると・・・日本のローカル線もびっくりな閑散とした駅前通りとなります。これでも国境に接する駅の駅前通りなのですよ・・・。


一方東側の出口は、検問所に通じるこ線橋を延々と歩きます。こちらが東側の出口です。こちらは駅舎らしき建物もないため、国境の駅の入口と言われてもピンとこない風景です。ちなみに「工事中につき、ご不便をおかけして申し訳ございません」というオレンジ色の看板が立っていました。


しかし駅前を見てみると、堂々とした検問所が目の前にありました。周りは工事中のため、ここが大きく発展するのはもう少し時間が必要みたいです。

目の前に広がる国境地帯


東側の出口に通じるこ線橋は、駅や国境を一望できる場所があります。こちらはマレーシア側を見た風景です。パダン・ブサール駅は2018年現在も、さらなる拡張工事が続けられていました。この光景を見るに、大規模な鉄道貨物ターミナルを作る様子でした。


そして反対側を向いてみると・・・こちらがタイとマレーシアの国境となります。左側にパダン・ブサール駅のホームがありますが、ホーム端からすぐ300mほどで国境となります。


わかりにくいという方へ、拡大してみてみます。黄色い機関車がプラットホームらしき場所に停車していますが、このホームの手前にあるフェンスが国境となります。フェンスの上には、Y字型の支柱に鉄条網が絡ませてある本格的なものです。国境を示す証拠に、フェンス隣の青い看板には「MALAYSYA/THAILAND」と書かれています。あの幅数インチにも満たないフェンスを境に、言語も通貨も時間も違うわけです・・・。


そして貨物列車は、悠々と国境をまたぎながらマレーシアへ入っていきました。この貨物列車はその後マレー鉄道が所属する機関車へと組み替えられ、そのままクアラルンプール方面に向けて去っていきました。

訪問後記


マレー鉄道は大きく分けると、イースト・コースト線(東海岸線)とウエスト・コースト線(西海岸線)がありパダン・ブサール駅は、西海岸線の支線ケダ線の始発駅となっています。西海岸線は「東洋の真珠」とも呼ばれるバターワース駅を始発として、マレーシアの首都クアラルンプールの中心駅KLセントラル駅へ向かうことができます。


かつてマレー鉄道は、タイ国有鉄道と同様2015年までは右下のようなディーゼル機関車による客車運航が主流でした。しかし西海岸線の高規格化及び電化によって、パダン・ブサールからKLセントラル(クアラルンプール)を経由してグマスまで、左上に映っている特急列車で一気に駆け抜けることが可能になりました。


パダン・ブサール駅自体も、近代化事業によってホームのかさ上げや新しい駅舎が作られました。そんなホームに入ってきたのは、マレー鉄道で一番新しい普通電車です。


しかし西海岸線の高規格化後、西海岸線を走っていたマレー鉄道の寝台列車は廃止されました。一方のタイ国有鉄道もバターワースへ乗り入れが、ここパダン・ブサール駅に短縮されることになりました。


タイへ向かうタイ国鉄の列車と、その車掌です。パダン・ブサール駅の嵩上げされたホームと、タイ国鉄の年季が入った客車の入口があっていないことがわかります。西海岸線の客車運航自体が廃止されたのは、おそらく性能や規格が違いすぎる駅や線路そして列車が喧嘩してしまうからなのでしょう・・・。

この駅を訪れたい方へ・・・2018年情報


かつてマレー鉄道・タイ国有鉄道の列車が互いに直通運転していたころ、パダン・ブサール駅はパスポート審査のために一旦乗客が下車するだけの駅でした。しかしマレー鉄道の高速化によって直通運転はなくなり、鉄道会社間の乗換駅になりました


この駅は訪問というより、越境時にパスポート審査で必ずお世話になります。一般的にバンコク~バターワース~クアラルンプールの鉄道旅でお世話になることでしょう。途中寄り道しながら訪問するのも結構ですが、28時間かけて直行で行く場合は以下の方法となります。

タイ・バンコク⇒マレーシア・クアラルンプール

  1. 15時10分バンコク発の特急45号パダン・ブサール行きに乗車、翌日マレーシア時間10時にパダン・ブサール到着
  2. 12時50分パダン・ブサール発の特急グマス行きに乗車、KLセントラル駅に18時30分に到着

なおタイ国鉄の寝台車はもちろん、マレー鉄道のKLセントラル駅方面の列車は満席になることがざらですので、タイ国鉄・マレー鉄道両方ともに予約サイトであらかじめ予約をしておきましょう。予約はそれぞれタイ国鉄予約サイトマレー鉄道予約サイトで簡単に空席照会や予約が可能です。

マレーシア・クアラルンプール⇒タイ・バンコク

  1. 11時30分KLセントラル発車の特急パダン・ブサール駅に乗車、マレーシア時間17時に到着
  2. 審査後にタイ時間17時発の特急46号バンコク行きに乗車、翌バンコクに10時過ぎに到着

しかしマレー鉄道の予約は可能ですが、パダン・ブサールからバンコクへのタイ国鉄の切符は、ネットでは購入できず現地購入するしかありませんでした。たとえ予約しても遅延で接続できない可能性があるからでしょうか・・・詳しくはわかりません。


そしてパダン・ブサール駅でのパスポート審査を忘れてしまうケースが多々あるようです。この駅での審査を忘れてしまった結果、次の出国審査で「入国手続きをしていない=密入国している」ということが発覚してしまいます。すると国外退去扱いとなり、今後数年間入国できなくなってしまいます。くれぐれもそのことを心に留めて、気をつけていい旅を・・・。

それでは、また不思議な鉄道風景でお会いしましょう。