【ブダペスト地下鉄1号線】世界遺産に登録されたにぎやかな地下鉄

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ブダペスト地下鉄1号線
世界の地下鉄で唯一「世界遺産」という称号を与えられている地下鉄があります。それは1896年に開業した世界で2番目の地下鉄、ブダペスト地下鉄1号線です。

ブダペスト鎖橋夜景
ヨーロッパでドナウ川沿いで煌びやかに夜景輝く都市、ハンガリー首都ブダペスト。世界一美しい夜景とも称されることもありどこを撮影しても絵になるような風景が広がります。中でも一番有名なのが、写真西岸のブダ地区・東岸のペスト地区を結ぶ鎖橋のイルミネーションです。なおブダペストは都市すべてが世界遺産として登録されています。

ブダペストアンドラーシ通り夜景
そのブダペストのメインストリートであるアンドラーシ通り。この通りも2002年ブダペスト都市の世界遺産に追加登録されています。そしてわずかこの4m地下で世界にも珍しい地下鉄が走っているのです。

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クリスマス祭りの広場、そこに地下への入り口が・・・

ブダペストヴェレシュマルティ広場
ここはブダペストの中心ともいえる広場、ヴェレシュマルティ広場。訪問したのは12月の上旬、クリスマスマーケットの真っ最中でした。

ブダペストヴェレシュマルティ広場売り場
クリスマスマーケットとは、クリスマス前の期間を中心にヨーロッパ各都市で開催されるイベントです。出店には金細工・カフェ・伝統菓子、いろいろなものを売っています。つまり縁日のヨーロッパ版といえばわかりやすいでしょう。

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場
ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場看板
そんな屋台に隠れるように、地下へ向かう大きな入り口がありました。ヴェレシュマルティ(Vörösmarty tér)駅と書かれています。ここがブダペスト1号線の入り口です。でもこれが世界遺産の地下鉄の出入り口・・・、お世辞にも状態が良いとは言えません。早速入ってみます。

20段足らずの階段を降りると・・・すでに鉄道風景


階段を下りて右を振り向くと・・・、黄色い車体が滑り込んできました。我ながらグッドタイミング。20段ほど降りて右向いて直進すると、改札なしですぐに乗車できるという利便性の高さ。
あ、もちろん切符は買ってください!発覚すると日本円で万単位の罰金を取られます。切符を買うため、乗りたい気持ちを抑えて電車を見送ります・・・。

ブダペスト地下鉄1号線世界遺産プレート
階段の途中でUNESCO世界遺産のプレートがありました。世界遺産のロゴ挟んで上がハンガリー語、下が英語です。

Andrassy avenue and its surroundings with the heroes square and the millennium underground

「アンドラーシ通りとその周辺、英雄広場とミレニアム地下鉄を含む…」このミレニアム地下鉄というのがブダペスト1号線の旧名称であり、今でも愛称として使われています。

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅ホーム
一見すると鉄骨造りのアールヌーヴォー様式ともいえるこの風景。電車が来る前に装飾を細かく見てみましょう。

100年以上前開業・・・とは思えない真新しさ

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅鉄骨
電車が来ないうちに少し線路際を観察してみると・・・。青銅色の塗装をした鉄筋がこれでもか、というぐらいに刺さっております。なるべく贅沢はいうべきではないとは思いますが、撮影には不向きです。またホームが低く、線路がかなり近く感じられます。

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅ドア
木目調のドアがホームの端や中ほど随所に点在しています。鉄道関係者が使用すると思われますが、今回実際に使われているところは見ることはできませんでした。そもそもハリボテの可能性も・・・そうじゃなかったらごめんなさい。

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅路線案内図
1号線の路線図です。駅名と現在地が矢印で示されており、シンプルで誰が見てもわかりやすいです。1号線は全部で11駅あり、
ヴェレシュマルティ広場」から「メキシコ通り」までの4.4Km
をほぼアンドラーシ通りの真下を通ります。これらの駅周辺には、聖イシュトバーン大聖堂・国立歌劇場・恐怖の館・英雄広場・セーシェニ温泉など、ブダペスト観光には欠かせない見どころスポットを巡る便利な路線でもあります。

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅駅名標
文様(あまり詳しくないです・・・)で囲った形式の陶器タイル製駅名版です。

こうして見ると100年以上前に開業した地下鉄ですが、年季が全く感じられません。ハンガリーは終戦後はソビエト連邦の支配下となりました。
その頃はブルジョアを思わせる装飾はおろか、無機質な暗い駅だったようです。ガイドさんによると、東欧革命の気運が出始めた1980年代から今の様式に改築したそうです。

世界遺産か・・・はたまた遊園地の乗り物か・・・

ブダペスト地下鉄1号線ヴェレシュマルティ広場駅折り返し線
さてここヴェレシュマルティー駅は1号線の始発駅で、行き止まりの線路奥に折り返し用の施設があります。そこには業務用のホームがあり、運転手はその島式のホームで反対側の運転席に移ります。


さっきの存在感満載の黄色い車体が駅に入ってきます。外釣り式のドアがせわしなく開いて乗客を迎え入れます。電車が入った途端、機械の音で急に騒々しくなります。なお地下鉄の構造が100年前の基準故、この車両は特殊で機械が床下ではなくちょうど耳元の連結部にあるわけです。うるさいわけですな・・・。


ホームに入ってきた電車は1分経たずにすぐにドアを閉めて発車していきます。カーブには15Km速度制限らしい標識があります。この速度で4.4Kmは長い旅(?)ですね。電車が通った後の信号は赤に変わりますが、切替わりが遅い・・・。


発車合図のチャイムとドア閉めのブザー・・・、さらに動画には映っていませんが、電車が去った後も線路でポイント切り替えの音が。どう見ても遊園地の乗り物という印象です。世界遺産の荘厳さ0。ホームで文句を言っていても始まらないので、さっそく乗ります。


乗っては見たものの、やはり遊園地の乗り物という感覚。いやもしくはそれ以上かもしれません。全長4.4Kmの地下鉄で情緒を感じること自体は100歩譲って無理かもしれませんが、それにしてもこのにぎやかすぎるサービスは何なんでしょうか・・・くどいようですがもう一度言います。世界遺産です。

オペラを見た後はすぐに地下鉄・・・、究極のバリアフリー

ハンガリー国立歌劇場
ハンガリー国立歌劇場内部
さて1号線沿線には、ブダペストの観光地の中でも有名なハンガリー国立歌劇場があります。会場内で催されるオペラ公演もさることながら、150年もの歴史を持つこの建物も一見の価値があります。まさに地下鉄1号線とともに1世紀レベルの歴史があります。

ブダペスト地下鉄1号線オペラ駅
ハンガリー国立歌劇場の1号線最寄り駅は、その名の通り「オペラ(Opera)」駅です。オペラ等の歌劇を見終わって、興奮冷めやらぬまま早く電車に乗りたいと思います。しかしこういう類の施設は、鉄道駅まで10分近く歩いて階段・・・すっかり冷めます。駅直結施設もありますが、雨に濡れないだけの長い通路を歩かされる場合がほとんどでしょう。でもここ国立歌劇場の出入口の目の前には1号線オペラ駅の出入口が・・・。歩いて2・3秒のDoor to Door、なんとも最寄すぎる駅です。

ブダペスト地下鉄1号線駅出入口
さらに20段程下るだけで鉄道のホーム。もはやエスカレーターやエレベータもいりません。もし電車がうまく来れば、歌劇場出口から電車の車内まで走れば6秒で(勿論やりません)・・・。でも1本逃しても3分程で次の電車が来てくれる頻度の高さです。まさに鉄道利用で世界で一番便利な歌劇場かもしれません。これには2013年に駅直結で喜ぶ東銀座の歌舞伎座も真っ青・・・。

他路線との唯一の乗換駅、デアーク・フェレンツ広場駅

ブダペスト地下鉄1号線デアーク・フェレンツ広場駅
「ヴェレシュマルティー」駅から1駅乗った次の駅、「デアーク・フェレンツ(Deák Ferenc tér)広場」駅です。この駅は2号線・3号線の乗換駅であり、ここでかなりの乗客が乗ってきます。そのためかほかの駅とは違い、鉄骨の柱を含めて華奢な装飾はありません。

ブダペスト地下鉄デアーク・フェレンツ広場駅エスカレータ
ここで1980年に建設された3号線に行ってみます。1号線が開業してから実に85年後の開業です。真っ赤なエスカレーターに乗って3号線ホームを目指します。20段で地下鉄という1号線の感覚に慣れてしまい、地下深く感じられます。

ブダペスト地下鉄3号線デアーク・フェレンツ広場駅ホーム
3号線ホームには切符をチェックする保安員がいました。切符を持っていないとつかまります。海外の改札がない地下鉄は信用乗車制といい、ホームや車内で切符をチェックされます。
私は今まで海外の地下鉄で一度もチェックされたこと自体ありませんでしたが、今回ここブダペストでは、この1日だけで3度もチェックされました。

ブダペスト地下鉄3号線デアーク・フェレンツ広場駅駅名標
1号線と比べて3号線のホームはやはり近代化しています。独特のアート装飾や四角形の蛍光灯照明器具など少々社会主義国的なテイストも残っています。


まもなく大きな音を立てながら列車がきました。かなりの年代物の車両で錆が・・・。ソビエト産の車両メトロワゴマッシュ製81-717/714型と呼ばれるものだそうです。かつては2号線にも走っていましたが、近年新型車両に置き換えられて現在3号線のみとなっています。この車両はここブダペスト以外にも、モスクワやワルシャワなどの旧社会主義国の地下鉄で走っています。


この車両の大きな特徴としては、旧ソビエト時代の面影を示す錆が浮いた古い車体、地下で響き渡る鈍くも低い走行音、そしてドアを閉めるときのあの荒く雑な動作。動画サイトではこの車両を映した動画が多く公開されており、カルト的な人気がある様子・・・。

訪問後記

ブダペスト地下鉄1号線
ヨーロッパで夜景が美しい都市と知られるハンガリー首都ブダペスト、そこで走っていたブダペスト1号線は世界遺産という名誉を受けつつも、大変にぎやかなサービスで乗客を運んでいました。それには1号線ことミレニアム鉄道が1894年に開業してからというのの、ハンガリーという国自体が王国の崩壊・世界大戦・社会主義政権という時代の荒波に引きずられてしまいます。しかし1号線はそんな時代の変化に屈することなく、今日に至るまでアンドラーシ通りの乗客輸送に徹してきたのです。世界遺産はまさにその証ともいえた背景かもしれません。遺産として永遠に生きることを許されたミレニアム鉄道は、今後も国としての遺産を守るという意思により大きな変化はないと思われます。しかし、車両についてはBudapest Business Journalにてこんなニュースが・・・。

Millenium metro could be replaced 「ミレニアム地下鉄の(車両)置き換え計画」
引用元リンク

あの存在感絶大の黄色い車両が、運転手もいないデザイン車両に置き換える計画が進展中です。

ブダペスト地下鉄3号線デアーク・フェレンツ広場駅駅名標
また3号線のソビエト製車両も、故障による交通マヒの頻発でどうしようもない状態らしいです。そのため3号線は2017年の中頃から改修工事に入るという情報もありました。なるべく末永く使ってほしいというのが本音ですが、やはり老朽化には・・・。でも一番守るべきことは乗客の安全輸送です。それこそが鉄道事業の本命です。きっと今後新しい車両と出会った時、また違った鉄道風景を見せてくれることでしょう。

それでは、また不思議な鉄道風景でお会いましょう。

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