【関西本線弥富駅】名鉄尾西線と共に名古屋行きが発着するターミナル駅

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ここは愛知県のとあるターミナル駅・・・とはいえ30分に1本しか列車が発着しない小さい駅。この会社が異なる2つの列車は、ともに名古屋という大都市を目指す・・・

関西本線弥富駅、JR東海が所属する関西本線の駅でありながら、名鉄尾西線の列車が乗り入れます。異なる距離ではあるものの、共に名古屋へ向かう列車が30分に1本ずつ発着します。

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多路線を1本の列車でつなぐ、名鉄の技

愛知県名古屋市にある、名古屋駅新幹線も全列車停車し、名鉄・近鉄等の私鉄も拠点とする中部地方の代表駅でもあります。地元では「名駅」とも呼ばれています。

中でも名鉄こと名古屋鉄道は日本の大手私鉄で3番目に長い路線を有しており、名鉄名古屋駅を中核とした運行を行っています。但し名鉄名古屋駅を発着する列車は少なく、各都市を発車した列車を名鉄名古屋駅に集結させて目的地へ向かわせる運行体制となっています。

今回紹介する弥富駅へはJRの関西本線で5駅ほどですが、記事の説明上17駅遠回りする名鉄で訪問いたします。名鉄名古屋から弥富へ向かうには・・・名古屋本線で須ヶ口へ行って、須ヶ口で津島線に入り、さらに津島で尾西線に入る必要があります。聞いているだけでも気が遠くなるようなルートです。

ところがそんな心配は杞憂でした、この電車は、名鉄名古屋を発着する尾西線の佐屋行き列車です。先ほども説明しましたが、名鉄は名鉄名古屋駅を中核として縦横無尽に各目的地へと運航する方式をとっています。逆に路線名による案内はかえって煩わしい為、「岐阜方面、豊橋方面」と終着駅で案内されることが多いです。

佐屋から弥富までのわずか2駅、そこには廃駅も・・・

さて問題はもう1つあります。この案内図の通り、急行などの列車が弥富まで行かず、手前の佐屋駅止まりとなっています。弥富駅まではあと2区間、ここはどうなっているのでしょうか。

佐屋駅から弥富方面の線路です。ご覧の通り佐屋駅を過ぎると、複線から単線となります。ここから先は乗客数と構造上の都合により、日中は30分に1本の普通列車しか運航しない区間となっているようです。

まず1つの中間駅、五ノ三駅にとまります。水田の中に線路一本にホーム1つというシンプルなものです。「五ノ三」という独特すぎる駅名ですが、村の縁を意味する「郷の桟」が由来とのことです。

そして次が終点の弥富のはずですが、その途中でホームらしき構造物が・・・廃止された弥富口駅です。ホームが2つあることから、行き違いを想定していたそうです。しかし駅や路線の乗客数が少なく、複線になることなく廃止されてしまいます。

隣り合う不思議

長い名鉄の旅もここで終わり・・・終点弥富駅にようやくたどり着きます。弥富に到着した名鉄の列車は、10分ほどで再び津島および名古屋方面へと折り返します。その折り返し作業中に、JRの普通列車が発着します。

弥富駅のホームは3つあり、JR関西本線は駅舎側の2つのホーム名鉄尾西線は駅舎反対側の一番遠い3番ホームに停車します。

旧国鉄のJRと大手私鉄の名鉄という違う会社であるにもかかわらず、その間には改札はおろか隔てるものが何もありませんJRと名鉄が改札内にある駅は弥富駅以外にも豊橋駅がありますが、豊橋駅でさえここまで近い距離ではありません。

JRの駅、そして隠れて名鉄・・・

弥富駅周辺の地図です。愛知県にある弥富駅ですが、三重県に入る木曽川直前に位置していました。ちなみに弥富駅の100mほど南には、関西本線に並走している近鉄名古屋線の近鉄弥富駅もあります。

こちらが弥富駅の駅舎です。白い壁に横長の建物、そして三角屋根が特徴的な1階建て平屋の駅舎です。看板には「JR 弥富駅」と書かれているだけで、はたから見ると名鉄が乗り入れているという雰囲気は感じられません

駅舎の中はこのような感じです。駅の業務はJRが行っており、名鉄の切符販売や改札もJRが行っています。IC乗車券で名鉄を利用する場合は、駅舎内と3番ホームにある改札機に2回利用する特殊なルールもあります。

ちなみに天井を見ると、名物である弥富金魚の装飾が飾られていました。しかも一昔前は本物の弥富金魚が、展示のために水槽で飼育されていたそうです。

時刻表を見てみますと、ラッシュの1時間に6本というケースを除き、関西本線は日中1時間に2本の普通列車のみです。名鉄尾西線も、時間帯関係なく1時間に2本となっています。

しかもJRと名鉄が隣り合う弥富駅ですが、互いの接続については考慮されていません。JRの駅でありながら、ご覧のように名鉄の列車が一人寂しく発着するというケースも珍しくありません。

訪問後記・・・JR・近鉄・名鉄の三つ巴 in 名古屋

列車の数はJRと名鉄共に30分に1本、一見するとほのぼのとした弥富駅ですが、実はこのような閑散とした雰囲気を漂わせる事情がありました。

地図でも紹介しましたが、実は弥富駅に近くには近鉄が運営する近鉄弥富駅があります。近鉄弥富駅は近鉄名古屋線が複線であることを生かし、日中でも10分に1本と急行列車も発着する大変便利な駅でもあります。その利便性のため、名古屋へ向かう利用者数は弥富駅を上回っているのです。

JR関西本線と名鉄尾西線が合流する一応のターミナル駅でもある弥富駅ですが、近鉄弥富駅に太刀打ちできない立場となっています。関西本線と名鉄尾西線は共に単線という設備面の弱点故、あまり列車数を増やせない事情もあります。特に名鉄に至っては、名古屋へ向かう際に遠回りしてしまうルート故その太刀打ちができません。

それは廃止されてしまった弥富口駅という存在からも説明がつきます。尾西線の佐屋から弥富は今もなお単線ですが、弥富口駅は複線になることを見越して2つホームが作られました。しかし複線化に備えて作ったホームは1度も使われることなく、2006年に乗客数減少で弥富口駅自体が廃止されてしまうのです。

一方で日本を代表する幹線でもある東海道本線の内、JR東海は熱海から米原までを運営しています。しかしその内豊橋から名古屋、そして岐阜の間は名鉄の名古屋本線と並走しているのです。異なる面で見てみるとJRと名鉄は協力する立場ではなく、むしろ競合している立場なのです。

写真はJR太多線の可児駅名鉄広見線の新可児駅です。ご覧のように駅舎が隣り合っているにもかかわらず、違う駅名となっています。このように名鉄は、既にあるJRの駅名の頭に「新」または「名鉄」を頭につけるというルールがあります。このような駅は可児の他にも鵜沼・一宮・岐阜、そして名古屋も然りです。

そんな競い合う中でありながら、弥富駅ではそれを感じさせない支えあう雰囲気を醸し出していました。色合いも性格も異なる2人が、共に名古屋へ向かうそんな風景です。

そしてJRの駅でありながら強烈なインパクトを放つ赤い列車がただ1つだけというこの風景、今日も乗客もまばらなこの静かな時が延々と流れる・・・