【香港西九龍駅】1国2制度の境界が駅舎内にある高速鉄道駅

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ここはアジアの大都市の中にある大きな鉄道ターミナル駅。目の前には地上の光が降り注ぐ開放感あふれるコンコース、しかしその間には制度の壁が・・・

広深港高速鉄道西九龍駅、中国高速鉄道が香港に乗り入れるための駅として2018年9月に開業しました。中国高速鉄道の終点と同時に香港の玄関口としての役割を持っており、双方の出入国審査場を備えた地下4階にも及ぶターミナル駅となっています。

そして西九龍駅は、中国の高速鉄道が香港に乗り入れる構造となっています。そのため高速鉄道に乗車するためには、香港の出国と中国の入国、そして荷物検査を行う必要があります。この記事では乗車までの方法、および注意点も紹介いたします。

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香港中心部、九龍に高速鉄道駅現る

東アジアの経済都市、香港。この写真は、九龍から撮影した香港島です。無数の高層ビルが立ち並び、100万ドルの夜景とも呼ばれるネオン煌めく風景は有名です。

そんな香港の九龍地区に2018年に突然現れたこちらの建物、あたかも写真左側から右側に向かって、地下から鉄筋が生えてきたような・・・。少なくともこれまでの人生で見たことはない建物です。

駅舎の入口には香港MRTのマークが大きく見えますが、その下に「香港西九龍駅」という看板が見えます。西九龍駅は中国本土を駆け巡る中国高速鉄道の路線の1つ、広深港高速鉄道のターミナル駅です。

ターミナル駅は9階層、展望台は屋上、ホームは最深部

西九龍駅の駅舎の中はこのようになっています。屋根を支える柱が曲がりくねっており、真ん中が吹き抜けで地下3階のコンコースが丸見えな構造となっています。う~ん、一言では形容し難い構造となっています。

西九龍駅の構造を知るための、各階施設案内看板がありました。西九龍駅は地上2階から地下4階まで、中層を含めて9階層にも及ぶ構造になっています。その中には展望台やレストラン街、出入国審査が必要な領域 (太字)を除けば、香港の他の名所同様立ち寄る価値ありの空間となっています。

地上2F:展望台とスカイデッキ

地上1F:歩行デッキ

地上G:バス乗り場

地上M1:レストラン街

地下1F:切符売り場と香港出国審査

地下2F:到着コンコース

地下M3:(審査場への)地下道

地下3F:出発コンコース

地下4F:ホーム

ちなみに冒頭紹介したこちらの写真は、西九龍駅地上2階にある展望台から撮影したものです。香港でまず思い浮かべる風景まさにドンピシャ・・・、新しいスポットの予感です。駅に用事がない方も、ぜひ立ち寄ってみましょう。

地下4階のホームへ、検査、審査、また審査

さて列車に乗る用事がなくても十分過ごせるスポット満載な西九龍駅、列車も改札さえ通れば・・・そんなわけがありません。国が違う以上、出入国審査と荷物検査を行わなければなりません。ここで中国本土へ向かう高速鉄道に乗るための方法を紹介します。

まず地下1階に降りると、中国本土へ向かう切符売り場があります。自動改札もありますが、パスポートを見せることを含めて窓口のほうが確実でしょう。ちなみに出発1時間前の列車は発売を打ち切りになりますので注意しましょう。

切符を入手した後は、すぐ後ろにある出国審査場の入口に並びます。ここでは荷物検査が行われますが、かなりの行列です。中国と香港を行き来する人たちが大量の荷物を抱えているため、かなりの時間を食うことは確実です。

荷物検査を終えて地下2階に降りると、香港の出国審査となります。しかし目の前にはずらりと並んだ無数の自動化ゲートです。そのゲートの数が、いかに香港と中国を行き交う人が多いのかを物語っています。

自動化ゲートは2つの扉を備えた二重構造となっています。まず入り口でパスポートを読み込ませると1つ目のゲートが開き、さらにゲートの中で指紋と顔を認証させると2つ目のゲートが開いて出国が完了するという仕組みです。その時間は30秒足らず・・・見事です。

ちなみにここまで香港の出国審査について写真付きで説明しました。その後は免税店が立ち並ぶ道を進むと、中国の入国審査と税関、そして荷物検査となります。しかし香港とは異なり中国側の撮影は制限されていたため、ここでは割愛いたします。それと同時に、無断撮影はやめましょう・・・

こうして度重なる審査や荷物検査を終えると、ようやく出発コンコースにたどり着くことができました。この出発コンコースは、地上香港側から見たときにも紹介しましたが、まさか国まで違うとは思いもよらなかった・・・

そして中国の高速鉄道はホームごとに改札機が設けられており、出発15分前に改札が始まり、そして出発5分前に打ち切るようになっています。遅延や駆け込みを防ぐためのルール故、くれぐれも乗り遅れないように時間を守りましょう。

改札を済ませると、地下4階のホームにたどり着きます。ホームにはすでに列車が待機していました。地下4階に位置しており風景が壁で遮られているためにこの1つのホームにしかないように見えますが、なんと未使用や降車用を含めて22ものホームがありました。

この駅を訪れたい方へ

まず西九龍駅の近くにある香港MRTの駅は、空港線・東涌線の九龍駅及び西鉄線のオースティン駅 (柯士甸駅) があります。

西九龍駅という名前ですが、香港MRT空港線の九龍駅からは15分ほど歩かなければならない距離にあり、むしろオースティン駅 (柯士甸駅) のほうが隣接している位置にあります。一方の九龍駅も、香港国際空港から空港線で1本で行ける点で便利です。

そしてこの駅から中国本土へ向かう場合ですが、長い入出国審査を伴うため、駅に入ってから1.5時間以上の余裕を持たないと確実に乗り遅れてしまいます。そのため鉄道駅としてではなく、空港から飛行機に乗る感覚に近いです。

駅に入ってから高速鉄道に乗るまで、香港側での荷物検査と出国審査、そして中国側で入国審査と税関、そして高速鉄道に乗車する前の荷物検査が必要になります。特に荷物検査は中国と香港を往復する大きな荷物を抱えた人々が多くいる故、時間がかかることを念頭に入れるようにしましょう。

訪問後記

1998年、香港は100年もの時を経てイギリスから中国に返還されました。しかしイギリスと中国は、政治制度があまりにも違い過ぎました。そのため返還後の香港は、中国とは違う政治運営を認められた1国2制度の下で成り立っています

そして香港返還から20年、2018年に突然出現した西九龍駅は、この形の如く地上に向かって飛び出した中国本土への入口です。

西九龍駅は、違う国が隣り合う不思議がそこにありました。地上と地下の間には、香港と中国の国境があります。国境といえど壁で阻まれているわけでなく、いまにも手を伸ばせば届きそうなそんな雰囲気です。 西九龍駅は、1国2制度に一石を投じる施設であることは言うまでもないでしょう。

現在西九龍駅で列車に乗るためには、1時間以上もの長い出入国審査を行う必要があります。しかし今後香港の処遇によって、この景色が一変する可能性があるのです。

中国にとって西九龍駅は、利便性のみならず香港に将来を考えてほしいとも願う施設であることは言うまでもありません。この駅によって香港という国のあり方を見ることができた、そんな1日でした。

それでは、また不思議な鉄道風景でお会いしましょう。