【185系踊り子】鉄道唱歌アナログ式オルゴールを奏でる最後の特急列車

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40年も姿を変えぬあなたの声を聴かせてくれないか・・・ヘッドマークに封印された彼女から聞こえてくるのは、傷心の旅人を慰めるオルゴールの旋律・・・

特急踊り子号は、東京から伊豆地方でもある伊豆急下田および修善寺を結ぶ特急列車です。1981年から今に至るまで185系と呼ばれる国鉄時代からの車両を使用し続けており、同時に国鉄時代の特急列車では標準搭載されていた鉄道唱歌のアナログ式オルゴールチャイムを搭載する唯一かつ最後の定期列車となっています。

なお特急踊り子は2021年に185系を置き換えることになりました。国鉄時代からの古き良き旋律を聞くことができる時間も、あと残りわずかとなっているのです。このページでは、希少な存在になってしまったアナログ式鉄道唱歌オルゴールチャイムを聞くことができる車両や方法を紹介してまいります。

オルゴールを今すぐ聞きたい方は、こちらの東京から品川の走行動画を再生していただければと思います。この音声を聞きながら記事を読んでいただくことができれば、あなたもある意味通です。

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傷心の旅人を誘う、永久に姿を変えぬ彼女

日本の表玄関、東京駅。まだ人がまばらな早朝の風景です。伝統ある駅舎の背後に近代的なビルが立ち並ぶこの駅は、日本の旅の始発駅ともいえる存在でもあります。

東京駅は都内の通勤列車や関東近辺への近郊列車の他、日本全国の都市を結ぶ新幹線が多く発着します。近年は九州・北陸・北海道まで延伸を果たし、東京駅の利便性の向上は目覚ましいものがあります。

一方でかつての夜行列車及び長距離の特急列車は、東京駅から次々と姿を消していきました。今回紹介する特急踊り子号は、1981年の誕生時から185系と呼ばれる国鉄時代の列車を一貫して使用し続けている東京発着の特急列車です。

特急踊り子号は東京駅から伊豆半島の町、伊豆急下田および修善寺へ向かう運航となっています。なお本記事は、185系で使用される車内放送のオルゴール式鉄道唱歌のチャイムについての内容になっています。特急踊り子についての詳しい運航については、以下のページをご覧ください。

【185系踊り子】40年間姿を変えていない東京駅発の国鉄特急
この電車は誕生から時を止めた夢列車。ヘッドマークに封印された永遠に若きその娘は、40年という長きにわたって傷心の旅人を慰め続けてきた・・・特急踊り子号は、東京から伊豆地方でもある伊豆急下田および修善寺を結ぶ特急列車です。1981年に「あまぎ...

踊り子が奏でるオルゴールの歌声を・・・

車内放送に使われるチャイムの元祖は、ゼンマイを用いたアナログ式オルゴールです。特に国鉄時代では、電車は「鉄道唱歌」、気動車は「アルプスの牧場」、客車は「ハイケンスのセレナーデ」のアナログ式オルゴールを搭載するというルールがありました。その後複数の音源をボタンを押すだけで流せる電子式の登場によって、これらのルールは姿を消していきます。

つまり国鉄時代に製造された特急列車の車内放送は、アナログ式オルゴールを使った鉄道唱歌チャイム機器を搭載しています。しかし近年国鉄時代の車両が淘汰されたり更新されることによって、現在現役の列車で使われているのは特定の185系を使用する踊り子のみとなっています。このアナログ式オルゴールを聞くことができる条件や車両などは、後々詳しくお伝えいたします。

185系の車内はこのような感じです。 一直線に並ぶ蛍光灯と荷物置き、そしてカーテンとソファーという国鉄時代の特急では多く見られた車内風景です。この車内から車窓を見ながら旅情を静かに楽しむことも、ここ最近少なくなりました。

一方こちらは185系の運転台です。運転台のドアには窓があり、デッキから前方を見ることが可能でした。この景色を見ながら旅を楽しむという玄人技もあります。今回はこちらからの映像をお楽しみください。

東京から修善寺への旅、オルゴールを聞きながら・・・

東京から品川までの出発の様子を収録した動画です。左に新幹線N700系、右にデビュー前のサフィール踊り子、そして発車直後にスピーカーから流れる鉄道唱歌のチャイム・・・わずか8分間でありながら旅が始まる雰囲気に包まれます。この動画を聞きながら以降の記事を見ていただければ幸いです。

東京駅出発から1時間半で熱海に到着します。伊豆急下田行きと修善寺行きの車両を併結している場合は、熱海で列車を切り離します。なお後で詳しく説明しますが、現在オルゴール式のチャイムが流れるのは修善寺へ向かう特定の車両のみとなっています。

修善寺行きの5両編成の列車はJR東海の運転士に交代し、さらに15分かけて三島まで進みます。三島からさらに先は伊豆箱根鉄道駿豆線に直通し、終点の修善寺へ向かいます。

修善寺に到着直前の車内の様子です。1つ前の牧之郷駅で対面の踊り子号を待つための運転停車した後、鉄道唱歌のチャイムが流れて終着駅放送となります。三島でJRから伊豆箱根鉄道の車掌に交代していますが、JRと同様にチャイムを流します。

終点の修善寺駅に到着した踊り子号です。到着後は車内清掃や整備を行いますが、チャイムを含めた車内放送のチェックも同様に行われます。

オルゴール式の鉄道唱歌チャイムを聞きたい方へ・・・

ここからかなり熱い話になりますが・・・お待たせしました。アナログ式の鉄道唱歌チャイムを聞く方法をお伝えいたします。以下の条件を満たせば確実に聞くことができます。

  1. 特急踊り子号185系
  2. 5両編成の車両で、編成番号がC2, C4, C6
  3. 修善寺発着列車 (特に土曜祝日)
  4. 東京駅出発後および修善寺到着前の放送、又は修善寺発車後の放送

特急踊り子号185系

まずオルゴール式のチャイムは国鉄時代の車両に搭載されていますが、2020年直前に国鉄時代の特急車両自体がほとんど引退してしまっています。四の五の言わず、生き残った185系特急踊り子号にまず乗車しましょう。

ちなみに185系は今回紹介した踊り子の他にも、「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」でも使用されていますが、これらの列車を狙うのはお勧めできません。早朝や夜の時間帯の平日運航という難しい時間帯という理由に加え、通勤目的の運航故にチャイムを自粛する可能性があるからです。その他「ムーンライトながら」「ホリデー快速」等々臨時列車がありますが、この場合も後述する特定の車両のみ搭載しているという確率的な事情故あえて狙うのはお勧めできません。

さらに余談ですが、踊り子の他もう1つ381系という国鉄時代の車両が使われている特急やくも号があります。特急やくも号は381系という高速走行に必要な振り子式と呼ばれる特殊な車両故、同時期に誕生した踊り子同様長く使用されている事情があります。ただしこちらは放送装置を含めた大規模な改造工事を行っているため、同じ国鉄車両であっても聞くことはできません。曲自体もクララ・シューマン作曲の「子供の情景・見知らぬ国と人々について」の電子音チャイムです。

5両編成の車両で、編成番号がC2, C4, C6

185系でアナログ式オルゴールの鉄道唱歌チャイムを流す放送機器が搭載されているのは、今回出会ったC2とほかにもC4, C6という番号が付いた5両編成の車両で使われていることを確認しています。 それ以外にも幾つか搭載している車両もありますが、稀な条件のみの使用および車両自体めったに使われない等不確実性が高い為、説明を割愛させていただきます。 (詳しく言うと、B7, C7という4両編成, C5の5両目です)

編成番号は185系正面の窓左上に列車番号を示すプラスチック版がぶら下げられており、これを見れば一目でわかります。

修善寺発着列車 (特に土曜祝日)

先ほど説明した5両編成の車両は、踊り子号では修善寺方面へ向かう列車として使われています。修善寺行きの列車は伊豆急下田行きの列車と併結して運航する為、東京~熱海間は12両または15両、熱海~修善寺では5両編成となります。

さらに特急踊り子号は観光目的故、土日祝日のみ運航する列車や「運転日注意」ならぬ臨時列車がかなりあります。無論列車を多く運航する日のほうがより多くの車両を放出するため、先述した放送機器を搭載した車両に遭遇する確率が高まります。特に平日の修善寺行きは1日2本という少なさ故、臨時列車が運行される可能性を含めて土日祝日が良いでしょう。

東京駅出発後および修善寺到着前、又は修善寺発車後の放送

最後にJR車内チャイムの基本となりますが、始発駅の発車直後と終着駅の到着直前に列車最後尾の乗務員室の放送機器からメロディーを放送します。つまり修善寺行きの5両編成が後ろ側になる伊豆急下田・修善寺行きの場合、東京駅出発直後および修善寺到着前の放送のときに必ず流れます。途中駅でも流してくれる可能性もありますが、やはり始発駅から終着駅まで乗車することが最も確実です。

一方の東京行きの場合は修善寺発車直後のみ流れます。注意したいのは熱海での併結後は伊豆急下田からの列車が後ろになるため、東京到着前のチャイムは電子音になります。

以上アナログ式オルゴールの鉄道唱歌チャイムを聞くことができる条件をお伝えいたしましたが、訪問当日に条件通りの編成が来るかは運営元であるJR東日本次第です。運用情報を問い合わせたり放送を強要する行為は業務の支障になるため、やめましょう踊り子同様自然の姿を楽しむことこそ、旅人のマナーです。

そして特急踊り子号として登場から活躍してきた185系も、E257系への置換によって2021年までの命となりました。ヘッドマークに封印された永遠に変わらぬ姿やオルゴールで旅人をもてなし続けた踊り子も、40年という長い歳月の前に抗うことはできませんでした。それでも彼女は私たち旅人を伊豆の国へ、きっと最後まで誘い続けることを・・・