【タイ国鉄バンコク駅・クルンテープ駅・フワランポーン駅】タイ全土の列車が集結する国鉄中央駅

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ここはとある国のターミナル駅の待合室、床に座る人々の思いは人それぞれ・・・。ここから全国の地方都市、中には国境を超える列車がここに集合する。

タイ国鉄バンコク駅。タイの首都バンコクにあるタイ国鉄の特級駅として、タイ全国へ向かう列車がすべてここに集結するターミナル駅です。列車を待つ人々、乗客をもてなす店舗、そして全国の地方都市へ行き交う列車、まさに鉄道の原点ともいえる風景を見ることができます。

ちなみに駅の名前は「バンコク(Bangkok)」と外国人向けでは案内されていますが、他にもタイ現地名での「クルンテープ(Krung Thep)」、さらに地元名「フワランポーン・フアランポーン(Hua Lumpong)」など様々な呼び名がこの駅には付けられています。この記事では駅名を「バンコク」として説明を進めてまいります。

そんな国の代表駅が、長距離列車の発着という役割を終えることになります。100年を超える歴史ある駅の、今ある風景を焼き付けるために・・・。

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天使の都、張り巡らされし鉄道


タイの首都、バンコク。1年中温暖な気候で名所や物価の安さもあり、「世界で最も外国人が訪れる都市」という称号が与えられるほど観光客の人気都市でもあります。


ちなみに「バンコク」は海外の呼称であり、現地タイの正式名称ではありません。現地では「クルンテープ・マハーナコーン・・・」と長い正式名称であり、略称として「天使の都」という意味の「クルンテープ」という名で呼ばれています。


そんな「天使の都」にも、鉄道がたくさん走っています。その1つがこちらのBTSと呼ばれる高架鉄道です。長年問題であった慢性的な渋滞の切り札として登場しました。日本もこの鉄道計画に協力しており、サラ・デン駅(Sala Daeng)では写真のような「タイ-日本橋 (Thai-Japanese bridge)」もあります。


しかしタイ全国を駆け巡るタイ国有鉄道こと「タイ国鉄」なくして、タイの鉄道を語ることはできません。そのタイ国鉄の拠点となる駅に参ります。

タイの代表駅、その秘密・・・


やってきたのは、こちらのドーム型の建物。こちらが、タイ国鉄の拠点ともいえるべき駅、バンコク駅です。日本では東京駅に該当する位、等級はタイの駅唯一の特別駅となっています。


そして地下鉄ことバンコク・メトロのブルーラインの駅も併設されています。こちらの名前は地元名である「フワランポーン」です。国鉄の駅舎もいいですが、まずはこちらを案内させていただきます。その理由は・・・


地下通路においてバンコク・メトロの説明のほか、タイ国鉄を含めた鉄道にまつわる説明が並べられています。ここで少しお勉強するのも良いでしょう?


なかでも一番インパクトが大きいのが、このガラス越しに保管されている4脚の椅子。これは開通式に今は亡きラーマ9世ことプミポン国王御一行が腰かけていたものです。


説明が遅れましたが、タイは王族国家です。鉄道においても王族関連の展示が多く、たとえ外国人であってもふざけた行為は一切許されません。くれぐれも温かい目で・・・。

ターミナル駅は便利がいっぱい


さて国鉄の駅舎に戻って建物の中に入ってみます。するとターミナル駅にふさわしい広いコンコース・・・正式には「ステーションホール」と呼ばれている空間です。床は清潔に保たれているらしく、そのまま床に座る列車を待つ人がたくさんいます。


こちらはバンコク駅の案内図です。一部2階の店舗を除き、1階平面のみの構造となっています。ここでせっかくなので出発まで駅内部を紹介していきましょう。


駅に入ってすぐ左のところには、荷物預かり所がありました。写真のようにガラス張りで、扉上部に1日分の料金表が貼ってあります。訪問時、スーツケースで1日60バーツでした。数日は保管してくれるらしく、私の場合は3日間世話になりました。


そんな荷物預かり所の隣は、小さなゲームコーナーがありました。日本の駅にはこのような素朴な施設はもうないかもしれません。周りにはゲームの空きを待つ人がまばらに・・・そんななかサッカーの試合を見ているお坊さまがかなり長く居座っておりました。これも日本ではまず見ることはできない光景です。


一方コンコースを挟んで反対側には、フードコートがあります。これから列車の長旅に備えてという方は、利用した方が良いかもしれません。


しかし時間外れという理由もありますが、かなり空いていました。これでも国を代表する駅のレストランなのですが・・・。どうやらチェーン店ではないようでつまりは国営?


他にもタイマッサージや土産物などの小さな店舗もそろっていますが、特にこの店は見たまんまでございます。パンを抱えつつ牛乳を飲んで目的地へ・・・という文化は、この国の人々にも根付いているようです。


他にも有料のトイレやシャワー等々・・・このように東京駅のように広大ではないものの、小さい空間でありながら旅の手助け店舗がそろっている構成にほっこりした気分になります。

亡き王様の肖像、14番線の広き構内


お店巡りをしたところで列車に乗りましょう。これはバンコク駅の出発案内版です。列車と種別と番号、行先と発車時刻、場合によっては遅延の案内も表示されます。なお2018年当時のダイヤでは、18時30分に発車する列車以降、すべて0時を跨ぐ夜行列車だけとなっていました。


列車に乗るためには、まずは切符を買うことは同じです。長距離列車が発着するバンコク駅なので、事前に計画を立てている人はタイ国鉄の予約サイトで切符をとっていると思います。そのためここで売られている切符は、予約サイトでは扱っていない当日に売り出される3等座席がメインとなります。勿論2等以上も残席があれば購入できます。


そして切符売り場を挟んだ中央に、ホームへの入口があります。入口には、バンコク駅開業時に在位していた「ラーマ5世」の肖像画があります。「ラーマ5世」は交通整備や行政改革など、この国の基盤固めに大きな役割を果たした偉大なる王として現在も崇められている存在です。


ホームに入ってみると、まさに典型的なターミナル駅ともいわんばかりの広い構内です。タイ全国から到着もしくは出発する列車が、ここバンコク駅のホームで行き交う風景が見られます。


そのまま進むと、バンコク駅の駅名標があります。この駅名標を起点として、タイ国鉄の列車は各地の地方都市へ向かうのです。、


ホームの構内図です。1番線・2番線の順に、ホームは12番線までのように見えます。しかし実は1/1番線と1/2番線たるホームも存在し、つまり計14番線にも及ぶ頭端式ホームとなっているのです。


しかしその1/1番線、1/2番線は主に降車専用ホームであり、公式には案内されていません。普段は写真のように貨物のための荷物置き場となっているようです。ちなみに1・2番線もホーム入り口よりも離れたところに車止めがあり、こちらも到着のみ扱っている様子です。


そして3番線から12番線には、車止めに発車案内のモニターがあります。写真は6番線に止まっていた特急13号チェンマイ行きです。もちろん寝台車が連結された夜行列車です。


しかしこのモニターが時折対応していない列車が来た場合に表示ができないらしく、床に放置されていた案内版が活躍するときがありました。

サボを掲げて全国へ・・・


ターミナル駅の雰囲気を堪能したところでようやくではありますが、列車を観察します。さすがは国を代表するターミナル駅、これからの長い旅路を走る列車達が、今か今かと発車を待っているような熱気に包まれていました。

長い旅を終えた列車が、早速入線してきました。列車が到着するや否や、乗客は普通に線路を横切ります。これも軽いカルチャーショックです。


タイ国鉄の各列車には、このような手で交換する行先表示こと「サボ」があります。この列車の行先は「スンガイコーロック」です。深南部最果ての地方都市スンガイコーロックまで約1158kmという距離を20時間かけて走破します。(東京から博多は1174.9km)


4.5番線の間には、そんなサボ置き場があります。ここではバンコク駅で行先を交換するサボが、今か今かと待っています。置き場の陰では、駅員らしき方が、椅子にふんぞり返って仕事(?)をしておりました。


ピンときた方もいると思いますが、「バンコク~チェンマイ」「バンコク~ノンカーイ」のように必ずバンコクが書かれています。つまりバンコクを発車した列車は、必ず全てバンコクに戻ってくるようなダイヤになっているのです。

時間変わって夜になりますが、先ほどの6番線に止まっていた特急13号チェンマイ行き列車が発車していきました。タイの列車は扉がロックしない客車もあるため、発車する際には客車の前後で車掌が顔を出し、安全灯を振りながら乗客がいないことを確認して発車します。

100年目を迎えたバンコク駅、その消えゆく役割・・・


タイ全国津々浦々へ列車を送り出し、そしてバンコク駅へ戻ってくる・・・それはタイを代表する国鉄駅としてふさわしくゆるぎない役割を背負っているようにも見えました。ところが・・・


そんなバンコク駅の中にこのような告知を見つけました。それはタイ国鉄の高架建設計画です。高架の構造図や立派な車両が書かれてことを察するに、国鉄の旧式化した設備を刷新したい思いが伝わってきます。そして長距離列車の拠点を、ここバンコク駅からとある駅に移す計画が持ち上がっているとのことです。


それはバンコク駅から少し先にある「バーンスー」駅です。この駅は北本線と南本線の分岐駅ですが、一見するとのどかな駅でもあります。


そんなの風景の後ろでは・・・駅の高架工事が行われていました。クレーンがひっきりなしに動いており、現在のホームとは打って変わってかなり大規模な構造物が出来上がっています。近い将来、長距離列車の玄関口は、この建設中のホームからとなる予定となっているのです。


冒頭に紹介したタイ国鉄バンコク駅舎も、長距離列車の発着拠点亡き後は博物館になる予定となっています。2016年に100年目を迎えたバンコク駅は、まもなくターミナル機能の喪失というそれ以上の節目を迎えることになるのです。


古い情緒が残るバンコク駅、長距離列車が止まるホームには、乗客や駅員がひっきりなしに線路を横断していました。しかし新しい高架駅では、このような風景も見られなくなることでしょう。この国において珍しくもなかったこんな日常も、そのうち消えていくのかもしれません。

それでは、また不思議な鉄道風景でお会いしましょう。