【韓国DMZツアー3:第3トンネル・シャトルエレベータ】誰も出口へたどり着くことができないトンネル

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トロッコ列車とトンネルの入り口、一見すると遊園地の楽しい楽しい乗り物のように見えます。しかし誰も出口へたどりついた人はいません。このトンネルは、一体どこへ向かうのでしょうか・・・


朝鮮半島は戦後2つの国に分断されています。写真赤い線が国境ならぬ軍事境界線であり、南北黄色い線が境界線付近の軍事行為を禁止する非武装地帯です。その非武装地帯に、突然北から南の方向へ向かって伸びるトンネルが発見されるのです。

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統制区域に侵入、向かうは・・・


南側韓国にある統一大橋、ここから先は市民統制区域に入ります。手前の看板には「承認車両、身分証明証の準備」「未承認車両、ターン」と書かれています。ここから先は許可なしの撮影は禁止されています。最悪武器とみなされますので・・・


地雷が埋まっている山を登りながら、上の地図にある施設を目指します。この施設は軍事境界線から500mも離れているかいないかという場所です。


そして山を登りきってたどり着いたのが、こちら・・・。資料館のほかにも、迷彩風な色合いの構造物が並んでいます。軍事境界線近くであることも然ることながら、ここが単なる休憩施設ではないことは確かです。

シャトルエレベータと出口なきトンネル


この施設の入り口にはこのようなモニュメントがあり、片方ずつ南北にかたどられた朝鮮半島が彫られています。見てもわかる通り、割れてしまった国を一つにしようとするという統一の願い・・・のようなものでしょう。なおメインはこの構造物ではなく、モニュメントに書かれている「第3トンネル」です。


第3トンネルに入る際に使う乗り物がこちら、シャトルエレベーターです。一見するとアプト式のトロッコのようにも見えますが、この1台の乗り物だけが単線区間を往復しておりエレベーターの扱いだそうです。


第3トンネルの内部は統制されており、カメラや携帯電話を含めた荷物をすべて預けてヘルメットを着用します。準備ができ次第シャトルエレベーターに乗ります。


シャトルエレベータは発車してトンネルの中に入りますが、残念ながらトンネル内の撮影は禁止されています。そのためここから先はトンネル散策後に見学した、DMZ映像館およびDMZ資料館に展示されている模型にて説明いたします。

誰も出口に行くことができない・・・


このトンネルの話の前に、軍事境界線についてお話いたします。2つの国の間には国境ならぬ軍事境界線が敷かれています。しかし境界線で直接にらみ合ってしまうとトラブルが起きるため、境界線の南北2Kmの幅で軍事活動を行わない区域いわゆる非武装地帯DMZが設定されています。この各境界が、「北方限界線」と「南方限界線」となるのです。


資料館の中には写真のような鉄条網の下を警備する軍の模型がありますが、この鉄条網も軍事境界線上ではなく南方限界線上に設置されているのです。鉄条網を超えた非武装地帯内は地雷が設置されており、人も踏み込むことができない自然の楽園となっているそうです。


そして1978年のある日、その非武装地帯の中でこのトンネルが見つかります。トンネルは北の方向から首都ソウルへ、その距離50km程しか離れていない方向に向かって掘られていたのです。このことから北側が秘密裏にトンネルを掘って南側に攻め込むための地下経由の侵略ルート、所謂「南侵トンネル」ではないかという結論となりました。


資料館にあるトンネル掘削の推測模型です。人民服を着た北側の作業員が、ダイナマイトを使って硬い岩盤を破壊しながら進んでいたとされています。事実黄色いまるで示されている南側方向に向いたダイナマイトの差し込み穴の跡が、現在もトンネル内に残されています。ちなみに北側はこのトンネルの掘削目的が、「石炭採掘の為であり、事実トンネルの壁面に石炭がある」と理由を述べています。しかしツアーガイドによりますと、「そもそもこの地層は石炭が出ない環境であり、北側は壁面に黒い塗料を塗ってトンズラした」とのことでした。はたまたどちらが正しいのか・・・。


先述のようにトンネル内は一切撮影は許されませんが、入り口付近にトンネルで見学できる終端部の壁を再現した模型がありました。このように人の目の位置に覗き穴が開いている構造になっています。ガイド曰く、終端部は軍事境界線から170m程しか離れておらず、終端から先はさらに1200mもの長さがあるという情報以外全くわからないそうです・・・。


結局トンネルを掘ったであろう北側は軍事境界線を越えたものの日の目を見ることなく存在を暴かれてしまい、一方の南側は軍事境界線を越えるトンネルの探索はできません。つまりトンネルが軍事境界線を跨いでいる以上、誰1人反対側にある出口に行くことができないのです。ちなみに「第3トンネル」という名前からお察しの通り、このトンネルを含めて4つの北側から掘られたトンネルが見つかっています。そしていまなお、「トンネルは他にもあるのではないか・・・」という噂が絶えることはありません。

観光状況 (2017年)

まず冒頭にも述べましたが「統一大橋」を渡ってからの撮影は原則禁止です。そして第3トンネルではトンネル内は撮影禁止はおろか、カメラを含めた荷物をすべてロッカーに預ける形となります。そしてDMZ資料館は入館初めの資料映像の撮影が禁止されていますが、それ以降模型や資料等の撮影はOKでした。


ちなみにシャトルエレベータは、第3トンネルを観光地化する際に設置されたものです。必要ない方は別にある入り口から徒歩でトンネル内部へ行くこともできます。ツアーでは第3トンネルの中に入るとき、シャトルエレベーターか徒歩かは当日の状況によって決まるそうです。


なお併設されているDMZ資料館には第3トンネルのほかにも、戦後の政権分裂の経緯や板門店についての説明も並んでいます。第3トンネルはツアーで一番先に回りますので、ここである程度の知識を習得してもよいでしょう。

今回はシャトルエレベーターという鉄道ではありませんでしたが・・・それではまた不思議な鉄道風景でお会いしましょう。