【三江線江津駅・江津本町駅】旧市街の山奥に隠れた本町の駅

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川に沿って進む、とあるローカル線の小さな無人駅。「本町」と名がつけられたこの駅は、静かなるせせらぎの音が響くその場所で・・・


三江線は広島県三次から島根県江津の100kmを結び、35駅もある長大ローカル路線でした。その駅の1つ江津本町駅は、終点江津駅の1つ手前にある無人駅でした。本町という名でありながら江津旧市街の裏手で自然に溶け込んだ風景や、江津駅からあまり離れておらず訪問しやすかったことから、訪れる人は多かったようです。


なお三江線は2018年4月に廃線となりました。今回紹介する記事は、2017年に訪問した記録です。

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江の川の河口、島根の港町


広島県三次から江の川を下りながら100kmを走る長大ローカル線、三江線。写真のように沿線の大半を蛇行する江の川を30km/h程の遅さで走行し、全線を5時間近くにわたって走破していました。


そんな三江線も江の川も、ここ海に面する漁港の町である江津が終着地となります。ここ島根江津の地で江の川は日本海に、そして三江線は山陰本線に出会うことになります。


その島根県江津市の中心駅である江津駅、古き良き国鉄時代を思わせる、1階建てのコンクリート駅舎です。山陰本線の中間駅と同時に、三江線の終着駅でもありました。


江津駅は特急「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」を含めた全列車が停車する主要駅です。一昔前は寝台特急の出雲も停車していました。発車案内には山陰本線の出雲市・米子方面と浜田・益田方面、そして今回紹介する三江線の石見川本・浜原方面の案内がありました。三次方面と書かれていないのは、1日2本しかないからでしょうか・・・。


実際駅に入ったところの案内板を見てみますと、「益田・下関・石見川本・三次方面」と書かれています。今回廃止となった三江線の石見川本と三次方面も然ることながら・・・、山陰本線も運行系統が分断された結果、現在江津から出る列車で益田を越えて下関へ向かう列車はありません

江の川をさかのぼって・・・1つだけ次の駅へ


こちらは山陰本線と三江線の分岐となります。ご丁寧に「山陰本線」「三江線」と業務用と思わしき看板もありました。山陰本線はそのまま江の川を渡る直線ルートとなりますが、三江線は右の方向へカーブして江の川に沿って三次の方向へ遡るルートをとっています。


江津駅周辺の地図です。東西方向に山陰本線が貫いており、その山陰本線の江津駅から枝分かれするように江の川へ寄り添う三江線も走っています。そして南東方向こと右下部分には江津の旧市街が書かれていますが・・・見つけました!「江津本町駅」が書かれています。地図や駅名からわかるように、江津駅から距離はあまり離れていません。


そして江津駅の駅名標には「あさり」「ごうつほんまち」と書かれています。浅利駅は山陰本線、江津本町は三江線です。しかし前もって言いますが、江津本町駅への列車訪問はお勧めできませんでした。なぜなら・・・。


三江線の時刻表は御覧の通りです。右側の山陰本線も1時間1本程ではありますが、対して左側の三江線は1日5本とスッカスカ・・・。これは山陰本線を過密路線に見せる錯視の一種、なわけありませんね。という訳で歩いて訪問します。

あるこう!旧市街の山道へ


江津駅の駅前です。江津駅周辺は、江津市の新市街が形成されています。近年写真左にある江津市観光案内所も含め、近年建てられたと思わしき真新しい建物が並んでいます。


三江線の鉄橋を渡ったこの先に、江津の旧市街地があります。現在は江津駅を中心とした新市街に行政機能は移っており、旧市街地は静かな住宅街のような雰囲気です。


江津本町駅周辺の地図です。江津本町駅は「本町」と名乗ってはおりますが、旧市街地の街中にはありませんでした。市街地から外れた先、江の川沿いにある街外れの山道を越えた所にありました。


旧市街を抜け、江の川へと通じる山道を上がります。太い水道管があたかも重厚なゲートのように見えますが、ここをくぐると江津本町の駅にたどり着きます。

江の川を望む静かなる駅


こちらが江津本町駅です。1つの列車しか止めることができないホームです。2kmしか離れていない隣の江津駅と比べてはいけません。


うっそうとした森から開けた川の風景に溶け込む駅・・・ザ・日本の隠されし風景(つまりは秘境駅)といっても過言ではありませんでした。ホームに沿うように道路がありますが、ここを通る車はほとんどこの駅を訪問する目的の方々でした。


江津本町駅の待合室に入ってみます。無人駅でありながら扉付きの待合室という快適性は申し分なしに見えます。屋根から光がかなり漏れていることは気にはなりますが・・・。

告!! 他のお客様の迷わくになるので、これ以上駅をヨゴサないで下さい。今後は関係個所へ連絡します。 鉄道部

快適な待合室には黒板がありましたが、残念ながら内容は以上の通りです。訪問のしやすさ故にここでひと時を過ごす人も多いですが、中には不適切な使い方をする人もいるようでした。せめて廃止前までにはポジティブな違う文言になることを願ってやみません。


最後に時刻表を見てみます。隣の江津駅とは異なり、三江線各駅の時刻表は横書きで書かれていました。1日5本であることには変わりなく、江津から列車訪問すると、帰りの列車は最低2時間15分後となります・・・

訪問後記、再びの江津駅・・・


再び江津駅に戻ります。空はもう暗くなり始めている黄昏時です。


江津駅の駅舎内です。三江線の案内も掲示されています。次の列車は19時5分の浜原行き。時計を見ると18時51分・・・急ぎましょう。


三江線の列車が到着しました。乗客は1人のみ・・・これが本来の三江線の姿でした。なおこの列車は10分後に浜原行きとして出発しますが、実は三江線江津駅を発車する最終列車です。


キハ120系の行先表示は手回しです。LED化で幕式自体も減っているのに、まさかの手動・・・。いや、それより「三次」「口羽」「浜原」「石見川本」、これらの行先表示もきっと・・・。


列車にとっては、10分程度のつかの間の休息です。キハ120系と隣駅江津本町と書かれた駅名標です。この光景も、まもなく過去のものになります。


黄昏時の中・・・最終列車が浜原駅にむけて発車していきました。そしてあの誰もいない浜原駅で夜間停泊、あの列車は夜を過ごすのです。


黄昏時の江津駅です。案内や観光名所の看板の明かりがともり始めます。日本海側には有名な温泉地帯が多く、有福温泉もその一つです。


冒頭にも紹介した下関方面と書かれていた案内看板です。現在ここ江津から下関へ向かう列車はありません。20年前に運行していた特急「いそかぜ」を最後に、ここから下関へ向かう列車はなくなりました。三江線どころか江津駅の案内自体が、もう時代から取り残されていたのです。


三江線が廃止されると、この看板もどうなってしまうのでしょうか・・・。